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2004/9/30(木)23:18 - 月白 - 3165 hit(s)
生徒会書記、吉野春香の日常
私立港北学園は、首都圏から電車に乗って三十分ほどの郊外にある、中高一貫のエスカレーター校である。
この共学校は入学金と授業料の理由から比較的裕福な家庭の生徒が多く、そういったせいもあってか校内はおおらかな雰囲気に包まれていて、学校側も自由で鷹揚な校風をモットーとしていた。
その昼休み。
廊下を、緩やかに進んでいる女生徒が一人。
白のブラウスに薄茶色のミニスカートをまとった、ふわりとしたショートカットの女の子。優しい目元にキュートな鼻・淡い弧の唇という横顔からは、とても柔らかな印象を受ける。
高等部二年、生徒会書記の、吉野春香だ。
整った外見以上に、誰に対しても温和な態度が好評の、学園でも人気上位の女子学生である。
「あ……あの!」
その春香を、思いきってかけたという響きで、後ろから呼び止める男子生徒がいた。
春香が振り返る。と同時に男子は、春香に向かって両手で封筒を差し出した。
「ええと……」
春香は、唇に人差し指をあててその生徒に軽く笑み、
「二年二組の、タカシくん……だっけ」
柔和に問いかけながら、男子が供している宛名も何も書いてない茶封筒を受け取る。
「はい! きっちり十枚、入ってます!」
そう返答して両腕を出したまま硬直しているタカシを、春香はふむふむとちょっと考えながら見つめた後、
「合格よ」
にっこりと天使のように、男子生徒に微笑みかけた。
「生徒会室でいいわね」
春香はそう続けると、タカシと連れ立って廊下を進み、突き当たりの生徒会室へと男子を導き入れた。
その生徒会室は教室の半分ほどの部屋で、壁にマホガニー製の棚が並べてあり、窓の前には豪華なデスクが鎮座している。机の両脇には、人口樹木とはいえ観葉植物があったりして、さながら社長室といった趣がある。
この時間帯、生徒会の面々が部屋に現れることはめったにない。活動は主に放課後なのだ。とはいっても誰かが絶対に来ないとは言い切れなくて……。
(でもそうなったら、それなりに楽しめるし……)
ぽっと、春香の奥に情欲の火がともった。
卓を背にして、春香はタカシに微笑みかける。その表情は、先ほどまでの天使の笑みではない。潤んだまなこに、淡い紅色のほほ。男を前に相好を崩している、劣情に火照った女の顔だ。 その春香が、
「ね……タカシくん、きて……」
甘く誘う音色を奏でる。
「封筒の中身の分……私のこと、楽しんで」
目尻を落としながら、ブラウスのボタンを二つ三つと外す。
だが、タカシは固まったまま動かない。春香はその男子生徒にすっと近づいて、首に両腕を絡め、リップをタカシの唇にそっと触れさせた。舌でそこを何度か優しく撫でると、男子の唇が僅かに開く。それを見計らって春香は、タカシの中に舌を差し込み、ゆったりと口内を舐め回し始めた。しばらくそうしていると、そのうち男子生徒も緊張がほぐれてきたのか、春香の舌に自分のものを絡めてきた。
中略(18禁シーン)
男と女の交わりを終え、両名とも身支度を整えている。
と春香が、タカシにずいっと顔を近づけてにっこりと微笑んだ。
「誰にも言わないでね。私たちだけの……秘密」
その男子に向けた面は、もう以前の温和で柔和な春香の表情だ。
「あ……ああ。それじゃあ……」
とまどいながら生徒会室を後にした男子生徒を見届けて、春香は満足したという吐息を漏らした。
ああタカシにはお願いしたが、噂というものはどうあっても広がってゆくものなのだ――春香はそれを知っている。次の相手は何年何組の誰だろうかという想像が、頂点に達して満たされたはずの身体を、またうずかせる。
春香は、胸ポケットから受け取った封筒、きっちり十万円が入っているはずの閉じ袋を取り出した。それにはなんの興味もない。お金目的でこういうことをしているのではないし、もっと言えばお金には全く困っていない。
生徒会の金庫を開けて、春香はそれをしまった。
いつも入っている謎の封筒の正体を、生徒会はそろそろ本気になって解明しようとし始めているところだ。あの美人で強気だけれど空振り気味の会長と、従順な男奴隷として振舞ってはいるがほんとうは人一倍我欲の強い副会長のコンビは、いったいどんな結論を出すのだろう。それも最近では楽しみの一つになっている。
「……んっ」
少しだけ声を出して笑うと、春香は部屋にある自分専用の棚から着替えの制服と下着を取り出した。これから、生徒会により設置されたばかりのシャワー室へ向かうのだ。その後は、ちょっと早いが日課にもなっている午後の紅茶にしようと思う。ちょうど都合よく、五時間目は自習になっている。気持ちのいい汗をかいた今日は、人一倍おいしい紅茶が飲めるだろう、そう思いながら、春香は弾む足取りで生徒会室を後にした。
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