よみかく分室課題部屋

1193 「ぼくがつんだお花は」　Ｎｏ．１０　のやり直し　２/１９　まこと

2005/2/19(土)16:49 - まこと - 3877 hit(s)

現在のパスワード

「ぼくがつんだお花は」　Ｎｏ．１０　のやり直し　２/１９　まこと

　日曜の昼ご飯のあとだった。つとむは外に出ようと玄関のドアを開けた。パッと目の前が白くなる。白い色はお日さまに目がなれても見えていた。花だ。白い花がいっぱい咲いていた。わぁと声をあげる。つとむの家のお向かいには建物がない。ずっとくさむらになっていた。いつの間にか花が咲いていたのだろう。それは声があがるほどの花だった。
　亜美ちゃんに花をあげようと思いつく。
　玄関さきの石段をとびおりた。小道のあっちにもこっちにも車は走っていない。黒い小道を渡る。どぶ板をガッコンとならせて空き地に入った。手を伸ばせば花がある。ひょろ長くて腰のあたりまで高さのある花だ。
　一本つんでみた。
　花の真ん中が黄色くなっていた。そのまわりにふんわりと花びらが広がっている。花びらの一枚一枚がおそろいのかたちをしていた。まるみのある細長いかたちだった。
　においをかごうと鼻を近づけた。あまいにおいがする。鼻先に花びらが触って一瞬だけひやっとした。くすぐったかった。
「喜ぶかなっ」
　亜美ちゃんの家は道の突き当りを曲がってすぐだ。
　つとむは歩きだした。だんだん足が速くなっていく。
　亜美ちゃんが目を大きくして花を見るところを想像してみた。つづいて笑顔が思いうかぶ。
　嬉しくてしょうがない。
　突き当たりのブロック塀がいきおいよく近づいてくる。つとむは風をきって走っていた。
　ブロック塀が車にさえぎられた。亜美ちゃんちの長細い車に似ている。亜美ちゃんちの車かもしれなかった。
　角を曲がると息をきらして立ちどまった。
　車が止まっている。さっきの車だ。
　ドアが開く。
　そこから黒いくつに白いソックスの小さな足がとび出してきた。結んだ髪にリボンをした頭がのぞく。亜美ちゃんだ！
　白のワンピースを着ていた。スカートがふんわり広がっている。
　ずいぶんとおしゃれをしているなと思った。
　つとむの息はまだはぁはぁしていた。
　亜美ちゃんのほうに男の人が笑いかけた。亜美ちゃんのパパだ。透明のセロファンに包まれたたくさんの花を持っていた。うしろ姿の亜美ちゃんが両手を出して色とりどりの花束を受けとった。小さな女の子には抱きかかえるほどの大きさだろう。
　亜美ちゃんのパパがなにか言ってつとむに手を振った。
　お休みなのにネクタイをしているんだななんて思っていた。
　リボンでひとつに結んだ頭がつとむを振り返る。
　――だめだ。
　つとむはあわてて手をうしろに隠した。
　亜美ちゃんが体をくるりとまわす。それと一緒に赤や黄色の花がゆれた。花を見る顔がにっこりと笑っていた。その笑顔がつとむを見た。
　つとむも笑おうとした。けれどできなかった。
　この花は渡せない。そう思った。

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

起　花をきれいだなと思い、女の子にあげようと考える主人公。
承　花を一本摘んで、女の子の家にむかった。
転　喜ぶだろうと気がはやる。走って家に向かうと女の子はすでに立派な花束を持っていた。
結　花が見劣りしていると思った主人公、あげられなくなってしまう。

・起承転結にそって内容を盛りつける練習です。