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1288 100本課題 No.8 「勝手な委員さん」(1000字) |
2005/6/30(木)22:21 - 魚住雅則 - 3951 hit(s)
熱をもった足首がじんじんと疼く。つま先が廊下の床をかするたびに体が固まる。なるべく右足を浮かせて歩いているのだけど、それでもときおり着陸してしまうのだ。
わたしは冷や汗の浮いた頬をぬぐって深呼吸した。はぅ。
「ほら。しっかりつかまって」
そういって、村井さんがさらに肩を寄せてくれた。
責任感ある保健委員さんに助けてもらってるのに、数歩ごとに固まってしまう。保健室はまだ遠く、リノリウムの床を占める夕陽の面積も広がってきた。
これ以上は、迷惑かけらんない。
「も、もうだいじょぶだから」
わたしは村井さんから身をはなした。
から元気でもってひとり歩きだす。一歩目――はうっ。二歩目――くぅっっ。さ、さんぽ……め……本能にしたがって抗議する足首。ええぃ、我慢してっ。
次にふみ出す足を迷って、バランスをくずした。
「うっ」
強い力で腕をつかまれる。耳元で「セ、セーフ……」と吐息まじりの声がきこえた。
「ありがとう」
なんとかお礼は言えたものの、ばつが悪くてわたしは顔を合わせらんなかった。すると、
「……あたし、わりと勝手なのよね」
ひとりごとみたいに小さい声がふってきた。
顔をあげる。村井さんはそっぽを向いていた。眼をふせているせいで睫毛が頬に影を落としている。
「いま帰るとヤな気分になるの。あたしがね。だから、言うことききなさい」
膝をおとして、ちょうど肩を預けやすい位置までしゃがんでくれた。
苦情は聞こえませんって感じでぷいっと顔をそむけたまま、目もあわせてくれない。
わたしはこっくり頷いた。
制服ごしに感じる村井さんの肩はこっちが心配になるくらい細くて小さい。でも、すごく暖かいのだった。
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●一行テーマ
「人に気を遣っていた主人公が素直に助けてもらおうと考え直す話」
●起承転結
起 捻挫したため保健委員の肩を借りて歩いている「わたし」。凄く申し訳なく思っている。
承 やせ我慢してひとりで歩きだそうとするが、痛みでよろめいてしまい、結局助けられる。
--------------↑申し訳なくてムリしようとする流れ↑----------------
---------------↓気を遣わなくていいんだと思う流れ↓-----------------
転 素直じゃない態度で放っておけないと言われる。それは自分に気を遣わせないようにするための演技(バレバレ)だった。
結 気を遣うのをやめて、助けてもらう
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