よみかく分室課題部屋

674 １０００字課題、１０／２７分、Ｎｏ．６６「そろそろと足踏み」（２０００文字）

2003/10/27(月)16:14 - 名無し君２号 - 10955 hit(s)

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Ｎｏ．６６
題名：そろそろと足踏み（２０００文字）

「先生！　シンゴのタイムは！」
「十一秒八」
「やった！　やったじゃんか、シンゴ。あの時とおんなじくらいにまで、戻ったじゃ
んか！」
「あ、ありがとう、トオルくん」
「お前、頑張ったもんなあ……。よくやったよ、ほんとに」
「――ぜんぜん駄目ね」
「あ……」
「ちょ、ちょっと！　なに言ってるんですか、先生！　こいつがあの時から……足、
ケガしてから、どれだけ努力したのか。先生だって知ってるでしょう！」
「知ってる。だから言ってる。ぜんっぜん駄目。なんなのよ、このタイムは」
「……あ、う」
「先生！」
「ちょっと武田は黙る。――いい？　中山、あなたの怪我はとっくに治ったんでしょ
う。だれが一年前とおなじタイムを出せといった？　あなたは、もっともっと速く走
れるはず。違う？」
「……あ、うう」
「先生。これだけやれば十分じゃないですか。これから、ゆっくりと……」
「中山、あなたはどう思っているの。これでいいの？　満足なの？」
「あ、の……」
「言いたいことがあるならはっきりと言う！」
「こ、怖いんです！」
「怖い？　まだ足が治ってないかもって？　それとも、また怪我することが？」
「ち、違うんです……。い、一所懸命、ギリギリまでやって、もしも……もしもそれ
でも駄目だったら……ぼくは、ぼくはいったいどうしたらいいんですか？　走る以外
に、なんにもないのに、ぼく、いったいどうしたら」
「そんなこと知るか！」
「ひ……」
「なに？　つまりただの人になるのが怖いってこと？　一所懸命やらなければ、挫折
もしない、だからずっと夢を見ていられるって？」
「す、すみま」
「あやまるな！　中山、お前はだれのためにやってるんだよ。自分のためだろうが！
　本当に走る以外になにもないんなら、とっとと走れ！　そろそろとばれないように
足踏みしてるな！」
「先生！　ちょっと落ちついて！　乱暴は……ちょっと！」
「お前みたいなのを見てると……。～～っ！　もう帰る！　お前たち、後は片づけと
け！」
「あ……」
「――まったく、無茶苦茶だよな、いつものことながら……。大丈夫か、シンゴ」
「……」
「あんまり気にすんなよ。お前なりのペースでいいんだからさ。ここまで来ただけで
も、おれ、お前のこと凄いと思うぜ」
「駄目だ……このままじゃ」
「え？」
「もっともっと、速くなんないと」
「シンゴ……」
「と、トオルくん。ぼ、ぼく、自分で片づけるから、あとは」
「ああ、よくわかった。しかたねーから、つきあってやるよ」
「え」
「タイム計るやつがいなくちゃ、練習にならねーだろーが」
「あ、ありがとう……」
「へ……べつにいーよ」
「じゃあ、私もつきあってやろう」
「うお！　なんですか先生！　帰ったんじゃなかったんですか！」
「指導する奴がいなくちゃ、練習にならないでしょうが。違う？」
「だからって、後ろから声かけなくてもいいじゃないですか。なあ、シンゴ……って、
お前」
「……あ、ありがとう、ご、ござ」
「――別に頭を下げる必要はないよ、中山。ほら！　早くしないと日が暮れるよ」
「は、はい！」

時間：２時間３０分

読んで欲しいもの（）は読んでの読者感想：
・なさけない主人公（かっこわりい）
・激をとばす先生（かっこいい）
・優しい友達（いい奴だ）

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【550】１０００字課題根っこ 2003/8/22(金)05:10 名無し君２号 (181)