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1253 「宝物のハンカチ」 短編の結 5/21 まこと |
2005/5/21(土)13:23 - まこと - 2508 hit(s)
「宝物のハンカチ」 短編の結 5/21 まこと
サツキは涙をこらえていた。
――気づかれちゃった、よね。
相手は和浩だ。気づいていないかもしれない。伏せた頭に視線を感じる。ここで泣くわけにはいかなかった。冗談だよと言って顔をあげなくてはならない。
短い間に頭をフル回転させて考えた。なにくわぬ顔を作ることにした。その顔を上げて見せる。
「サツキちゃん、怒った? そりゃ怒るよなぁ。わるい! 俺って、人怒らせんの上手いんだよねー。まいったなー、許してくれる?」
「う、んん」
カン違いぶりは予想を越えていた。ホッとした反面で、やっぱり気づいてはくれないんだなと思う。
「なんて言うのかなー。自分の推理は、絶対に正しい。なーんて思っちゃってさぁ」
そういう悪びれないところに、ひかれる。
普段のサツキは人見知りをする。けれど人見知りをせずに話せたことがある。その相手が、どこかとぼけた、それでいて素直な和浩だった。話をするたび、自分まで素直になった気がする。気がつけば、目で追いかけるようになっていた。
「よかったー。範子に怒られるとこだったー。こえーからなぁ、君のお姉ちゃん」
想いが大きくなればなるほど、うれしさや楽しさは減っていく。どんどんつらくなっていく。
「かっこわる」
「なんだよ、ひでぇなぁ」
サツキは笑った。ふ、ふ、と二回、鼻で笑った。上手に笑えた。
「え? サツキ、ちゃん?」
和浩が腰を浮かせた。テーブルに左手をつく。その姿がぼやけていた。鼻の奥が熱い。
ポトッという音が聞こえてきた。
「ど、どうした? そんなに傷つけちゃった?」
和浩がイスの背もたれをつかんだ。立ち上がる姿が、ゆがんだり、はっきり見えたりをくり返している。
「ちが……う、の。あのね、あの……ね」
しゃくりあげながら、言ってしまおうとした。言いたかったあのことばが、のどのところにあった。すぐに出せるところにあった。
「カーズー!」
声は部屋の外から聞こえた。二階で怒鳴っているのかくぐもって聞こえる。機嫌の悪そうな響きだった。
「わっ、とっ」
和浩は斜め上を見た。すぐに顔を戻す。そして、サツキを見つめてくる。返事もせずにおたおたしていた。和浩がどうするのか見守っていた。結果はわかっている。サツキが許せば、姉のところへ飛んでいくのだ。今か今かと待っているのが、よくわかった。
引き止めるのは簡単なことだった。許さなければいいのだ。
――行っちゃダメ。お願い、行かないで。
無駄なことだ。わかっている。
「和浩さんの、ばか」
パタッと和浩の動きがやんだ。体はドアに向かっている。顔だけがサツキに向いていた。
「うめ合わせはするよ。ごめん」
顔の真ん中に開いた手を立てた。ばたばたと廊下に飛び出していく。
――変なの。これでも気づかないなんて。
今度こそふふふと声をたてた。
「ばか」
テーブルにしずくが落ちる。そのそばに、ハンカチがポツンと残されていた。
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「一行コンセプト」
義兄を好きだという気持ちを、隠しきれなくなってしまった義妹のお話。
「構成メモ」
泣きだしそうな主人公。鈍感な義兄はカン違いをする。耐えきれなくなって本心をあらわしてしまう。
※主人公が読み手のかたに嫌われないように。義兄がバカにならないように気をつけて書く。
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・時系列順にする。時間逆行禁止。
・重文、複文禁止。
・倒置法禁止。
・体言止め禁止。
・気弱語禁止。比喩禁止。
・読点禁止。
ただし、セリフやここぞってときには使用可。
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