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988 1000字課題 6/2分 NO.7「旅行 二日目」(独白追加版) |
2004/6/3(木)21:42 - 白猫 - 7463 hit(s)
「おい、起きろよ。飯の時間もうすぐだぞ」
誰かに体を揺すられている。目をうっすらと開ける。ごっつい顔が目の前にあった。
「うわあ!」
飛び起きた。落ち着いてみると斉藤の顔だった。
「いきなり叫びながら起きるんじゃねえ!びっくりするだろうが」
「ごめん。君の顔が……いや何でもないよ」
「てめえ!人が気にしてることを」
掴みかかってくる。
「まだ、何も言ってないじゃないか。君が顔のことを気にしてるのは分かったから。わっわっ!ちょっタンマ!やめろって」
「そんなこと言ってる奴にはお仕置きだ。くらえ、電気アンマー!」
「無理無理!もう二度と言わないから許して!」
「本当かー?」
「うん、ホントホント!」
「じゃあ、やめてやろう」
「ふう」
まだ、股間がジンジンする。周りを見るとまだ他の奴は寝ていた。それを斎藤が次々に起こしていく。
「しかし、君早起きだねえ」
「お前らが遅いだけだよ。もう朝飯の時間だから早く着替えろよ」
着替えてみんなで朝食を食べに食堂まで行った。朝ごはんは焼き魚、海苔、卵焼きという結構普通のメニューだった。軽い失望を感じつつ部屋に戻った。
「今日は山にハイキングに行くんだよねー」
「そうだね……」
眼鏡の少年些細が答える。
「朝から暗いなあ。朝飯が気に食わなかったのか?」
髪がボサボサの田代だ。
「ち、違うよお。僕はいつもこんな感じなんだよ……」
「普通ご飯食ったら、気分も明るくなるよぅ」
「いや、お前だけだろ。ご飯だけで明るくなれるなんて幸せだね。悩みなんか飯食ったらすぐ忘れそうだしな」
デブの高橋を酒井がからかう。
「僕をバカにするなー!」
「近づくなよ。暑苦しいんだから」
「まあまあ、少し落ち着きなって」
「ふん。今日は佐伯に免じて勘弁しといてやろう」
「しかし、ハイキング楽しみだよねー」
「このメンバーでだろ?めんどいなあ」
そう言いながらもどこか楽しそうな田代。
「集合時間はっと……。もうこんな時間かよ!あと十分じゃん」
「ホントだ。急がないと」
慌てて準備にはしる。飲み物や食べ物は適当に買ってけとのことなので、荷物は大分少ない。
「よし、できた!みんな準備できた?」
「僕はOKです」
「俺もできたぜ」
「僕もできた」
「俺もOKだ」
「どっかに俺の財布ない?」
辺りを探す。
「これじゃない?」
「お、そうそう。ありがとな。じゃあ、これで準備完了」
「じゃあ、行きますか」
みんなで集合場所のホテルのロビーに向かう。そこで点呼をしバスに乗って、昼食などを買った。そのまま山に向かう。
「ふぃー。着いたー」
こっからは班ごとに時間をずらして行動だ。順番は何故か僕たちの班からだった。
「さっさと行こうぜ」
「うん」
山道に入っていく。
「いやー、たまにはこういうのもいいな」
「そうだね。最近は入試があったから部屋にこもりっきりだったし」
しばらく斎藤を先頭にしてみんなで歩いた。段々、道が狭くなり、ついには人一人がやっと通れるくらいの獣道になった。
(道が大分狭くなってきたような……。本当にこっちで大丈夫かなあ?)
「ねえ、ほんとにこっちで大丈夫?」
「大丈夫だって、学校がそんなに迷いやすいところでハイキングなんてさせないだろ」
「そ、そうだよね。大丈夫だよね」
「そんなことよりおなか空いたよー。どっかで昼食食べようよー」
「うるせえ、デブ。大体落ち着いて食べれる場所がないだろうが」
そうだった。周りには木々が生い茂り、落ち着いて座れそうにない。
「あそこならみんなで座れそうじゃない?」
何故かそこだけポッカリと穴が開いたかのように草木がなかった。
「ホントだ。ねえ、早くあそこに行って、食べようよー」
「わかった。わかった。お前の食の執念には負けるよ」
レジャーシートを敷き、みんなで円状に座った。ついさっき買ってきたばかりの奴をリュックから出す。おにぎり、サンドイッチ、弁当、スナック菓子とみんなさまざまなものを買ってきていた。
「なんかあれだね。店で買ってきたものばかりだとなんだか味気ないね」
「やっぱり自然の中で食うと上手い!」
「僕はどこでもおいしいけどね」
「デブは食べるのに集中してろ」
「言ったなーもぐもぐ。後で覚えてろよ」
「確かに買ったものばかりでも室内で食べるよりはおいしく感じるね」
「些細君がいっちょ前のこと言ってるねえ」
「田代君、いちいち僕のことからかわないでよ」
「ごめんよー。君からあまりにもいじめてオーラが出てるからいじめたくなるんだよね」
「田代、弱いものいじめはよくないぞ」
「斎藤君まで……。確かに僕は弱いかもしれないけどさ」
そうやって和やかな食事の時間は過ぎていった。
「そういえば、大分ここにとどまってるのに後ろの班の奴ら追いついて来ないね」
「やっぱり、本当に迷ったんじゃ」
「大丈夫だって。他の奴も飯でも食ってるんだろ。さっさとゴールしてホテルに帰ろうぜ」
(本当に大丈夫かなあ?でもここから戻るのもなあ。この道が間違ってなかったら嫌だし)
「うん、大丈夫だよね。じゃあ、そろそろ行こっか」
「そうだな」
立ち上がり、歩き出す。
四時間後。
(疲れた。もうめちゃくちゃ歩いてるのにまだ着かないなんて絶対おかしいよ)
「やっぱりおかしくない?、もうかれこれ四時間以上歩いてるんだけど。予定では二時間半ぐらいでつくんじゃなかったけ?」
「そ、そうだっけ」
「そうだっけじゃないだろ。どうすんだよ。戻るか?この道であってたら他の班に会えるはずだし、間違ってても出発地点に戻れる」
「でもさあ、ちゃんと戻れるかなあ」
「とりあえず、どっかで休もうよぅ。僕もう疲れたー」
「そうだな。どっかで落ち着いてこれからのことについて話し合おう」
さらにしばらく歩くとちょうどいいスペースがあったのでそこで休むことにした。
「さて、これからどうする?」
「僕たちには二つの選択肢があると思うんだ。一つ目はこのまま進むこと。二つ目は道を引き返すこと。一つ目は危険が大きすぎるし、二つ目も正確に戻れるかはわからない」
「三つめもあるぞ。ここで死ぬまで待つとか」
「こんなときに演技の悪い冗談言わないでよ」
「でもさあ、意外にいいアイディアじゃないか?」
「?」
「いや、さっき田代が言った奴。のろしとか上げれば誰かがみつけてくれそうじゃん?」
「のろしってどうやってあげるの?」
「うっ。すまん。知らない」
「他に何かわかりそうなものは……山火事起こすとかは?」
「俺たちが焼け死ぬんじゃないか」
「うーん」
動くに動けないないまま、日が沈んだ。幸いにも食料は余分に買ってあったのでとりあえずの分は困らなかった。
「……」
「……」
「……」
みんな疲れたのか。誰も話そうとはしない。春とはいえ日が沈むとやっぱり寒い。僕たちは自然と寄り集まっていた。それは寒さのためだけではないのかもしれなかった。
「今、何時なんだろ?」
「さあ」
「学校の教師たちとか大慌てで探してるのかなあ」
「そうかもね」
返答にも力が無い。そのとき、誰かの携帯が鳴った。最近流行の歌手の最新曲だったような気がする。
「こんなときにメールか。まあ、見てみるか」
パカっ。酒井が携帯を開く。
(あれ?メールが届くってことは……)
「ちょっと待って。ここ電波通じるの?」
「そうみたいだな。アンテナは三本立ってるよ」
「じゃあ、電話かけようよ」
「あっ」
みんなの声がハモった。
「山奥だからてっきり通じないのかと思ってたぜ」
「はやくかけようよ」
些細が急かす。はやる気持ちを抑えて本部に電話をかけた。
「もしもし、佐伯ですけど」
先を言わせてもらえなかった
「佐伯君っ?今、どこにいるの?みんな無事?」
すさまじい早口でまくしたてられる。
「みんな無事です!通じた!通じた!」
後ろのはみんなに向けてだ。
「今どこにいるかわかる?」
みんなが無事だとわかってとりあえず、落ち着いたようだった。
「すみません。わからないです。山の中っていうのはわかるんですけど……。」
「そうよねえ。何か目印になりそうなものとかある?」
「あ、近くに一際でかい杉の木があります!」
「でかい杉の木ね。他には?」
「うーんと。何かある?」
「お、あそこにほこらみたいなのがあるぜ」
「ほこらみたいなのがあるそうです」
「ほこらと杉の木って心当たりあります?」
どうやら、電話の向こうで地元の人に聞いているらしい。
「わかったわ。心配しないでそこで待ってて。すぐに助けがいくから」
「すぐに助けが来るって」
歓声があがる。
「よかったー。これでやっと家に帰れる」
「何か俺たち馬鹿みたいだな。只、携帯で電話かければよかったのに。ひたすら悩んで」
「あはははっ。確かに」
暗い山の中明るい笑い声が響いた。
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┣【895】 春日用 2004/4/19(月)22:33 管理者 (6) |
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┣【936】 家や部屋を示す言葉 2004/5/8(土)23:36 春日秋人 (1953) |
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┣【957】 1000字課題用 2004/5/21(金)21:06 管理者 (6) |
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┣【988】 1000字課題 6/2分 NO.7「旅行 二日目」(独白追加版) 2004/6/3(木)21:42 白猫 (7167) |
┣【958】 読書課題用 2004/5/21(金)21:07 管理者 (6) |
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┣【961】 追記 2004/5/22(土)19:43 白猫 (202) |
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