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1310 津荒 1000字課題 No.1「出会い」 |
2005/7/29(金)01:18 - 津荒夕介 - 5670 hit(s)
1000字課題 No.1「出会い」
津荒夕介 2005年7月29日
笑い声が飛び交う高校最初の授業。その中で純也はドキドキしていた。
授業への期待とかからではない。隣に昨日一目ぼれした女の子がいるからだ。
立てた腕で顔を隠し、横目で彼女を見る。
倉田あずみ、と自己紹介していた。
乱れの無いロングヘアーを小さく揺らしながら、穏やかに先生の話を聞いている姿は、まるでお嬢様だ。
――ちくしょう、ほんとに美人だな。
にやつきそうになるのを堪えて、純也は視線を机に戻す。そして、どうやったら仲良くなれるだろうかという考えに没頭し始めた。
しかし中々良い案が浮ばない。手を顎に持っていこうとしたら、消しゴムに当たった。
机を転がるのを、慌ててつかむ。
同時に、ひらめいた。
消しゴムを使おう。倉田の方に転がして、拾ってもらうのだ。お礼と一緒に軽くギャグでも飛ばせば、『うふふ、愉快な人ね』とか思ってもらえるはずだ。
純也は小さく頷き、消しゴムを握りしめた。倉田が前を見ているのを確認する。
腕をさりげなく垂らし、小さく振って勢いをつける。
だが、純也は中々指を離さなかった。
唐突に、周りがどっと笑った。
純也は慌てて手を机の上に戻した。ちょっと消しゴムを見つめる。小さく息を吐いて、消しゴムを机に戻した。
気づいたのだ。こんな手できっかけを得ようなんて、女々しすぎる。違う方法を……
と、上履きに小さな衝撃を感じた。
なにかと思って、足元を見る。小さな四角い消しゴムが転がっていた。
「あの……」
声が横からかかった。倉田だ。
純也は耳まで真っ赤になりながら、消しゴムを一瞬で拾いあげた。
「こ、これ」
差し出された白くて細長い指の上に、消しゴムを乗せる。
冗談を言う余裕は無かった。
そんな彼に、少々の沈黙の後、倉田は唇を片方だけつりあげて笑いかけ、
「ありがとね、じゅん君」
ぼそり、と言った。
びっくりして、体がすくんだ。
クククと笑いながら、彼女は前に向きなおった。
20×50字で1000字です。
起 倉田と仲良くなりたい純也
承 話しかける方法を考えて、悩む。
転 倉田の消しゴムが転がってきた。
結 倉田は予想と違う性格のようだった。
起承は、自分から話しかけようとする流れで、
向こうからチャンスがきた――てのが転です。
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