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2005/8/9(火)07:36 - 津荒夕介 - 4806 hit(s)
1000字課題 No.3「掃除当番」
津荒夕介
「じゃ、わるいけどよろしくな」
「ああ、じゃーな」
言って、夏樹は廊下へと走っていった。
教室には、宮地孝太だけが残った。
「さて、ちゃっちゃとやるか」
声は虚しく教室に消える。夏樹が部活の仲間と話す声が、遠くから対照的に聞こえた。
苦笑するしかない。
掃除当番は孝太と夏樹以外にも四人いた。だが、部活や塾で時間がないと帰ってしまった。担任教師はトイレ掃除をしている。結局、クラス掃除は、孝太一人だ。確かに机を動かさないから、一人でできるのだが。
友人達は口々に有難うと言っていた。人のためになることをしているんだ。悪い気はしない。
ホウキ片手に、夏樹は黙々と掃除を始めた。途中、辺りが瞬間的に暗くなった。
ん? と顔を上げると、蛍光灯が点滅していた。
備品の交換は、掃除の時にやることになっている。以前交換したのも孝太だった。
掃除道具を道具箱に投げ入れて、教室を出た。蛍光灯は近くの物置に入っている。
歩いていると、笑い声が聞こえるクラスがあった。ちらりと中を見る。ホウキでちゃんばらをしていた。いつも以上にむっとして、早足で通り過ぎた。
硬いノブを回して、物置に入る。スイッチをつけると、肩を寄せ合った棚が弱々しく照らされた。
ほこりを吸い込まないように息を止めて、中に入った。蛍光灯を手にとる。
教室に戻って、蛍光灯をつけた。なんだかやけに疲れてしまった。
イスにもたれかかりながら思う。
せめて夏樹だけでもいてくれたらな。
一人じゃなければ、もっと楽しくできたのに。部活だって塾だって、そんなに時間が無いわけじゃなからろうに。
ガラガラガラ。
戸が開く音――。イスごと転がりそうになりながら、孝太は振り返った。
いたのは担任教師だった。
「おう、宮地。ほかのやつらはどうした」
「もう帰りましたよ」
「ん、ほうか。そんじゃあ、お前も早く帰れよ。じゃあな」
「へい」
夏樹がくるわけがない。孝太はカバンを持って、席を立った。無表情だった。
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