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1003 弟切、テープ起こしその1の補完と編集、前編
2004/6/17(木)02:06 - 弟切 千隼 - 821 hit(s)

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O「これで、録音できるはず。じゃ、すみません、よろしくお願いしまーす」
Y「はい」
O「まあ、気にせずに、ね。せっかくのランチだから、食べながらしゃべって」
Y「うん」
O「……なーんか、このお箸、すごく長いねえ。男持ちの箸みたい」
Y「確かに」
O「男の人なら、手、大きいからこのくらいでもいいんだろうけど」
Y「あたしたちじゃ、ちょっときびしいですよね」
O「そーいえばねえ、中国行った時に、やっぱこんなだった。長いんですよ、向こうの箸も。で、けっこう太くて、先が丸いんですよ」
Y「ああ」
O「こっちの箸ってみんなこんななんだ、って思った」
Y「中華料理店に、たまに行ったりしても、やたら長かったりしますよね」
O「そうそう、みんなああいう感じ」
Y「へえ」
O「みんな、ナチュラルにああみたいですよ」
Y「じゃあ、向こうの人たちからすると、日本人はなんであんなちっちゃい箸で物が食べられるんだろうって、不思議なんじゃあ」
O「そうかもしんない」
(間。食べている)
O「……うーんと、今、何時だっけ?」
(間。食べている)
O「すごい。さすが、お店の煮物は上品だわ。こんなん、私できないよー」
Y「うふふ」
(間。食べている)
Y「外、いい天気ですねえ」
O「ほんと、いい天気だねえ」
Y「洗濯してくればよかった」
O「あはは」
Y「最近どんどん所帯じみてきて」
O「あたしもねえ、布団干したいよなあとか思ったんだけど、さすがに布団はやめといたわ」
Y「出かけると、夕立とかが怖くて、干せませんよねえ」
(間。食べている)
O「どう、社会人になって? 友達と会って話すのも大変じゃない? なかなか人とペースが合わないよね」
Y「そうなんですよー。だいたい、みんな土日休みですからね」
O「平日休みだとさあ、友達と会えないよね」
Y「この職業、どんどん、友達が減るよーって、脅されました」
O「そうだろねえ」
Y「だいたい、大学の友達は、公務員とか普通の事務職員とかなんですよ。でも、地元の友達は逆に、流通とか、介護系とかなんで」
O「ふんふん」
Y「休みが合いにくくて、さらに会うのが難しい……」
O「そだねえ」
Y「ひとり、同じ雑貨系小売のLへ行った子がいて」
O「おぉ?」
Y「ライバルだライバルだって、言ってたんですよ」
O「ほおー。あたし、いそうでいなかったんだよね、そういう友達って」
Y「流通業界の人が?」
O「いや、流通業界の人はいるの。だけど、衣服とか、食料とかばっかりで、雑貨系の人がいなかったねえ」
Y「けっこう、面白いですよ、雑貨系って。こんなのも売れちゃうんだ、っていうのがあって」
O「ははは」

―――――――――――

O「あのさあ、一度訊いてみたかったんだけど、Hの社員さんって、売ってる物は全部使ってみてるの?」
Y「ああ、あれはですねえ、一応、売れ筋は全部使ってます。それ以外のは、販売員によりますね。あたしのトレーナーだった方は、ほぼ使ってました、自分の担当分は」
O「おお、素晴らしい」
Y「でも、ワックスは、さすがに全部は使えなかったみたいです」
O「ワックスは、個人じゃ無理そうだねえ」
Y「洗剤と、防虫剤と、消臭剤は、だいたい比べてたみたい」
O「えらいなあ」
Y「だから、その人の家、すごくきれいらしいです」
O「いやでも、きれいになりそうよね」
Y「取引先の方から、多少、物をもらえるんですよ。今度うちで新しく入れたいんですけど、試して下さいって」
O「うんうん」
Y「洗剤なんか、感動的に汚れ落ちが、違いますねえ」
O「そんなに違うんだぁ。業者の人が試供品くれるの?」
Y「ええ。この商品の値段、まだ決めてないんですけど、これぐらいの効果でこれぐらいの量だったら、いくらぐらいがいいか考えて下さいって、ちょっとだけ分けてもらえるんです」
O「じゃあさ、例えば、シャンプー売ってる社員さんだったら、毎日いろんなシャンプーを試してるとか?」
Y「ええと、まず、試供品をもらって、使ってみて、それで良ければ、店頭に置くらしいです」
O「ふむ」
Y「まあ、たぶん限界はありますよね。正直に言えば」
O「わはは」
Y「化粧品とか、食べ物とかの、万が一何かあったら大変なものは、ちゃんと試食なり何なりしますよ」
O「だろうねえ」
Y「ただ、社員にも、熱心な人とそうでない人がいますから……全部が全部やるわけじゃないです」
O「会社としてやれ、っていうわけじゃないんだ?」
Y「いえー、さすがに、新しく入れる物は試すように、っていう方針です」
O「個人に任されてるわけね」
Y「はい。だから、がんばる人はすごくがんばってますけど、そうでもない人は、そうでもない、と」
O「ふむふむ。……いやね、あんだけたくさんの商品があるから、どおしてんのかなあ、って思ってたのよ。だって、まったく知らなきゃ、紹介できないじゃんねえ」
Y「あ、調理器具のコーナーの人たちは、ひととおり、やってましたよ。けっこう違いを訊かれるんで」
O「説明するには、使ってみるしかないもんねえ」
Y「あと、洗剤とか、消臭剤とかは、ある程度知識で補えるみたい。これの消臭成分はこういうのだから、これぐらい取れるはず、とか、説明してもらったんですけど」
O「うん」
Y「聞いてもさっぱりわかんない〜。わはは」
O「はっはっは」
Y「社員の皆さんは説明好きだから、話しだすと長いんだ、これが」
O「ふふふ。でも、Hの人って、訊けばちゃんと答えてくれるのが好き。普通のお店の人だとさ、訊いても答えが返ってこないことがあってさあ。じゃあ売んなよ、とか思うよね」
Y「だからあの、勉強しました。研修中だから、一週間しかいないけど」
O「その意気、いいね」
Y「せめてこれぐらいは」

―――――――――――

Y「はぁー、世の中は不思議に満ちていました」
O「面白いもんだねえ」
(間。食べている)
O「そういえばHにさ、ペットコーナーってあるよねえ」
Y「はい」
O「あそこの商品って、やっぱり、ペット好きの社員さんが使ってみてんの?」
Y「たぶん、飼ってる方は、試してるんじゃないかと……。たまに、お客さまで、こっちが付いていけないぐらいの薀蓄を、垂れる方もいて」
O「いそうね、そういう人」
Y「意外な物がけっこう売れるんですよ」
O「どんな?」
Y「ペットのいる家庭用のワックス、なんていう物があって、そんなのが」
O「売れちゃうんだ。ふーん……最近ペットブームだからねえ。ペット用品売り場に行くとびっくりしちゃうよね、いろんなものがあって」
Y「猫用の首輪、じゃないや、散歩用の引き綱を見た時には、びっくりしました。ええと、犬用とおんなじ形なんですけど、ちょっと小さいんです、猫でも使えるように」
O「なるほど」
(間。食べている)
Y「最近……エビとかアリとかが売れるんですよ」
O「およよ? まあ確かに、静かで、都会向きよねえ」
Y「専用の容器に入ってるんですよ。詳しい仕組みはわからないんですけど、中に生態系がひととおり揃ってて、何もしなくても、中のものは生きてるんです」
O「うん、そのままずっと、日の当たるところに置いとけば、放っといてもいいってやつね。昔からあったよ、そういうの。たしか、エコスフィアとかいう名前がついてた」
Y「そのー、うちで売ってるアリが、どうやらNASAが開発した装置に入ってるとかで」
O「へーえ」
Y「宇宙アリっていうポップが付いてます」
O「その容器って、巣の中も見えるようになってるの?」
Y「いえ、巣はなくて、ブルーのゼリーみたいなものの上に、アリがたくさん、ちょこまかしてます」
O「土が入ってるんじゃないんだ?」
Y「土はないんですよ。なんか、ゲル状の……あの、消臭剤で、ゼリーっぽいのがありますよね? あんな感じのが入ってます。どういう仕組みなんだろう?」
O「へえー。アリはそこに、穴を掘ってるんじゃないわけ?」
Y「ううん。段階が進めば、巣、作っちゃうのかも知れないんだけど、入荷した時点では、まだ、上をちょろちょろしてるだけです」
O「へー、ふーん。それは、飼って経過を見てみたいよね」
Y「私も、ちょっとエビとか買っちゃおうかな、と思いますね」
O「静かでも、生き物がいるって、いいよねえ。……クラゲとかも売ってるよね、今」
Y「同期入社の人が、ペット売り場の近くに配属されたら、クラゲがいるって」
O「あの、海水浴場によく出るミズクラゲでしょ」
Y「海で見ると全然可愛くないのに、水槽に入ってるのはいいかも、って思っちゃう」
O「あれは、見てると癒されるよね、ふわーっとしてて。……クラゲとかエビとか、クリオネとかも売ってるよね」
Y「クリオネ欲しい〜。でも、あれ、飼うの難しそうですよ」
O「前に会った人でねえ、クリオネを飼ってたって人がいたの。どうやって飼ってるんですかって訊いたら、暑さに弱いから、冷蔵庫に入れてんだって」
Y「あはは」
O「ガラスのコップみたいな入れ物に入れてたんだって。クリオネって、餌やらなくても一ヶ月くらい生きてるらしいのね。だから、その間冷蔵庫に入れとくだけ。時々冷蔵庫から出して眺めるんだって。でも、手の上に載せてるとあったまってきちゃうから、そしたらまた冷蔵庫に戻す」
Y「長時間は、愛でられないんですね」
O「そーそー。長時間愛でるなら水族館に行くしかないみたい。……でも、冷蔵庫を開けるとクリオネが入ってるっていいかも」
Y「何も知らない人が来て、冷蔵庫を開けたらどうなるんでしょうね?」
O「私の知り合いの、クリオネを飼ってた人ってね、冷蔵庫の中にはクリオネとビールしか入ってなかったんだってー、ぷはは」
Y「クリオネはビールとともに冷えているんだー」
O「そうらしいです」
Y「……なんか、冷蔵庫内部を想像するとすごくシュールですね」
O「そうよねー。一番絞り、とかとクリオネが一緒に並んでる図を想像すると……」
Y「クリオネ的にはどうなんだろう?」
O「どうなんだろう? 彼等には視覚はあるはずなんだ」
(間。食べている)
O「もともと、クリオネって、オホーツク海の氷の下にいるから、薄暗いのはたぶんオッケーなんだよね。寒いところの生き物だから、冷蔵庫内部っていうのもいいんだよね。環境としては、ちょうどいいのかも」
Y「寿命はどれぐらいなんでしょう、ね?」
O「なんも食べなくても一ヶ月ぐらいは生きてるって言ってたけど……もともと、そんなに長く生きるもんじゃないと思うなあ。一年なんて生きないんじゃないかな。クリオネって、ああ見えても貝の仲間なんだよ」
Y「へええ」
O「ただ、貝殻は、退化しちゃってて、ないの。たぶん、生まれる時は卵だと思う。貝類って、卵からかえった子供の頃は親と全然違う姿だから、クリオネもそうだろうね。他の貝も、子供の頃は、海の中を泳ぐプランクトンなの。普通の貝は、そのあと貝殻ができて、海底這うようになっちゃうんだけど、クリオネは貝殻ないから、ずっとぱたぱた泳いでる。……クリオネって、実は肉食だからなー」
Y「餌は何をあげるんでしょう?」
O「水族館では何あげてんのかなあ? サンシャイン水族館とか、江ノ島水族館とかで飼ってるよねー。魚のミンチみたいなもんあげてんじゃないかな」
Y「ふーん」
O「野生のクリオネは、すごいよー。オホーツク海に、同じように、浮いて暮らす貝がいるのね。その貝は、泳いでるくせに、でんでん虫みたいな貝殻持ってるの。退化した、薄い貝殻だけどね。そこにクリオネみたいな翼があって、ぱたぱた泳いでる、冗談みたいな貝なの。この貝を、襲って食べちゃう、クリオネが」
Y「えっ!?」
O「そう、食べちゃうの。クリオネの頭の部分に口があってね、普段は閉じてるから見えないんだよね。その、貝殻を持っててぱたぱた泳いでる貝に近寄ってって、がばって口開けて、ばくって食べる。子供が見たら泣くよねー」
Y「じ、実はクリオネって、愛らしくないかも」
O「そうそう。食事風景はすごいらしいです」
Y「見たいような、見ないでおきたいような……」
O「食われる貝のほうがね、可愛いみたいよ。それはプランクトン食だから、おとなしいんだって。貝殻持っといて泳ぐなよって思うけどー」
Y「何がしたいんでしょーねー」
O「なぁんか、実物見るまでは信じがたいよね。貝殻があるのに、ぱたぱた泳いでるってねえ」
Y「わはは」
(間。食べている)
O「クリオネって、可愛いふりして実は肉食だって、みんな知らないんだよなあ」
Y「知ったらショックですよー」
O「うん」
Y「クリオネの食事風景、そのままトリビアに」
O「うん、トリビアになりそうだね、あれは」
Y「全国の皆さんの夢を壊すぞーって」
O「壊せるねー。外見でものを判断しちゃいけないよ、って」
Y「そのまんまですね」


〔ツリー構成〕

【1001】 弟切、テープ起こしの根っこ 2004/6/14(月)23:04 弟切 千隼 (79)
┣【1002】 弟切、現実の会話テープ起こし、その1 2004/6/14(月)23:12 弟切 千隼 (23329)
┣【1003】 弟切、テープ起こしその1の補完と編集、前編 2004/6/17(木)02:06 弟切 千隼 (10274)
┣【1005】 弟切、テープ起こしその1の補完と編集、中編 2004/6/21(月)00:54 弟切 千隼 (3262)
┣【1006】 弟切、テープ起こしその1の補完と編集、後編 2004/6/22(火)01:26 弟切 千隼 (6967)
┣【1014】 削除
┣【1087】 削除
┣【1089】 弟切、現実の会話テープ起こし、その2 2004/9/8(水)21:56 弟切 千隼 (14365)

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