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1281 100本課題 No.7 「しづ姉」(1000字) |
2005/6/25(土)01:04 - 魚住雅則 - 3551 hit(s)
「だからっ……ぜはっ……ゲーム……ほどほどに……はうっ……しなさいっ…て言ったのよ」
しづ姉は自転車のサドルによりかかってあらい息をついていた。
ゲームのしすぎで寝坊したぼくを乗せて、家から学校まで全力で飛ばしてくれたんだ。感謝してる。でもさ、
「ぼく寝てたよね。しづ姉が夜中に起こしにくるまで」
「そ……そんなのしらない」
つぃっと視線をそらすイトコだった。あんたホントに大学生か。
「おっ。送ってもらったのか。いいね」
背後からの声にふりむく。校門前で同級生の田村がニヤついていた。
あの顔はぜったい何か企んでる。どうせ教室につくなり、しょーもないことを言いふらす気だ。
ぼくはため息をついてランドセルを背負いなおす。どんな言い訳をしようか考えながら彼に近づいていった。
「いひ。見ちゃった」
「ちょっ、田村、話を」
「あら、お友達?」
いつのまに回復したのか、しづ姉がとなりに立っていた。風圧でくしゃくしゃに乱れていたはずの髪はすっかり整っていた。そして右手にもっていたクシをさりげなくジーンズの尻ポケットにつっこむ。拍手したいほどムダのない動きだった。
「えっと、はい……その……」
田村は目をみひらき、何度もぼくとしづ姉を見比べた。
「これからも仲良くしてあげてね?」
ふだんより一オクターブは高い声。『優しいお姉さんオーラ』も全開だ。
「それと……いま見たことはひみつにしてくれるかな」
かがみこんで田村に顔を近づけるしづ姉。純情な友人は真っ赤になった顔をぶんぶん上下させる。
は、はひっと返事したまま固まる田村をひっぱって教室に向かった。
「お、おいっ今の誰? 姉ちゃん? 姉ちゃん? つか、ぜんっぜん似てねえよ!?」
「……イトコだよ」
そっけなく答えてうしろを振りむく。しづ姉はちいさく手を振ってくれていた。
すげー、キレーというつぶやきが隣から聞こえる。この分ならコイツが教室で言いふらすこともないだろう。心の中で頼れる従姉妹に頭をさげた。
おみそれしました……さすが大学生。
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●一行テーマ
「主人公が従姉妹を見直す話」
●起承転結
※しづ姉は「ぼく」の家に週末から泊まっている。あけて月曜日の朝。
昨夜おそくまでゲームに熱中していたせいで寝坊した主人公。面倒見のいいしづ姉が自転車で送ってくれるという。恩にきなさいよと得意げな従姉妹に苦笑しながら出発。
(しかしそもそもゲームの相手をさせるために「ぼく」の部屋に乱入したのはしづる)
起 従姉妹に学校まで送ってもらったものの、彼女のだらしない態度にちょっと呆れる主人公。
承 同級生にその場を見られる。こんな状態の従姉妹を見られたら恥ずかしいと焦る。
転 うってかわって上品な仕草で同級生に挨拶する従姉妹。同級生はその演技に騙されて緊張。
結 すっかり言いなりな同級生は送迎も秘密にしてくれそうだった。オトナな従姉妹を見直す。
●主人公から見た「しづ姉」のイメージ:
前半:わがままで子供っぽい大学生「しづ姉」
後半:察しがよく、小学生ごとき一瞬で手玉にとる「しづ姉」
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