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1292 100本課題 No.9 「気持ちは分かる」(1000字) |
2005/7/4(月)22:16 - 魚住雅則 - 2421 hit(s)
「すみませんでしたっ」
目に涙をためてこちらをのぞきこんでくる女の子。ジャージの紺色から一年生だと知れた。彼女が打ったボールを避けきれず、直撃をくらったのだ。
「平気だって」
ほらな、とその場で跳ねてみせた。負傷を疑われてる右足でもってグラウンドを蹴り上げる。
笑顔が引きつっていないか自信がなかった。脇の下は冷や汗でぐっしょりだった。足の裏が地面にふれるたび、骨の中をでかい釘がかけめぐる。姿勢をくずしそうになると、隣にたっている河村をささえにしてゴマかした。
「ほんとかすっただけ。な?」
「うん、本人もこう言ってるし、大丈夫だよ。気にしないで?」
河村がめがねの奥の目を細めていった。
一年生は納得していない様子だったが、おれは強引に話を打ち切ることにした。
「そろそろ戻らないと、試合とか、近いんだろ?」
「あ……はい……。ホントにホントにすみませんでしたっ」
ひときわ深く頭をさげると、彼女はきびすを返した。
数歩すすむごとに振り返っては頭をさげてくれる。おれと河村はその場にとどまり、手をふってかわいらしい後輩を見送った。
「ホントに平気なのか?」
「おう」おれはなおも笑顔で手を振りつづける。
小柄な後ろ姿が曲がり角にさしかかる。彼女は最後に振りかえって一礼すると、こんどこそ完全に校舎のむこうに消えた。
「う!」
それが限界の合図だった。おれは前のめりにたおれこむ。
図っていたようなタイミングで河村の腕が伸びてきて、おれを支えてくれた。
「気持ちは分かるよ。女子の前だったしな」
ため息まじりの声。
はは、やっぱ――バレてたか。おれは右手をあげて、「おう」と応えた。
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●一行テーマ
「女子の手前、やせ我慢しようとする主人公。何も聞かなくても主人公のカッコつけたい願望を察してくれる友達」
●起承転結
起 女の子が打ったボールがあたって怪我をした主人公。謝られている。
承 平気なフリをする主人公。友人も一緒になって何でもないよと笑ってみせる
-----------↑女の子の手前、やせ我慢している流れ↑--------------
--------↓女の子がいなくなったので、我慢をとく流れ↓-----------
転 女の子がいなくなったとたん、我慢の限界で倒れる主人公
結 すべて察していた友人、きっちり支えてくれる
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