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1307 1000字課題、07/28、No.6「火付けの極意」 サカモト(998字) |
2005/7/28(木)00:14 - サカモト - 1979 hit(s)
題名:火付けの極意
小さな火が新聞紙を食べ尽くして、消える。カマドの中には、薪と新聞紙の灰だけが残った。それを見ていた勝義ががっくりと肩を落とす。気付けば、炊飯場に差し込む日差しが、さっきよりきつくなっていた。
「兄さん、火まだ?」
弟の春が声を掛けてくる。刻まれた野菜の入ったボールを手に持っている。カレーの下準備は整ったようだった。
「うっさい! 少し、待ってろ」
穏やかな笑みを浮かべて立っている春に八つ当たりする。彼のほほんした顔は、いつも気持ちをささくれただせるのだ。
キャンプのガイドブックに目を通しながら、再度、火付けひ挑戦する。薪の組み方良し。新聞紙の置き方も良し。割り箸サイズの薪を作って、火を付けやすい様に工夫もしてみる。
今度こそ!
意気込んで付けた火は、再び新聞紙を食い尽くして収まった。
「兄さん、オレお腹すいたよぉ」
お腹を押さえながら言う春の抗議を黙殺し、立ち上がって本を読む。
「くそっ、なんでだ。本に書いてあるとおりやってるのに」
読むページを間違えたのかと思い、本を見直す。火付けの解説ページには、丁寧に赤線も引いてあった。だが、どのページを見ても、今以上の手順は載っていなかった。
「あーーー。ついた、ついた」
嬉しそうな春の声が上がる。見ると、カマドの中で火が薪を食べ始めている所だった。
あれだけ必死に付けようとしていた火が、あっさり付いている。見たところ、特に自分と違う事をやっている様子はない。春に対する嫉妬がメラメラと燃え上がった。
勝義の気持ちなぞ知らず、無邪気に喜ぶ春。
「どうしてっ。どうやったんだ、お前」
きっと何か、特別な事をしたんだろうと思い春に聞く。海外を長い間放浪してきた春のことだ。本に載ってない方法を知っていても不思議はなかった。
「どうって、やっただけだよ、普通に」
「普通って。俺がやってた時は、全然駄目だっただろ。どういう風に火、付けたんだ」
「えー。ただコレを使っただけだよ」
そう言って、春はポケットからシンのない小さなローソクの様なモノを取り出す。ローソクっぽいモノには、『着火剤』と書かれたラベルが貼ってあった。
「おい」
半眼で突っ込む勝義。
「キャンプ場のおじさんがくれたんだ。コレ使うとつけやすいよ。どうしたの兄さん」
下を向きながら肩をふるわせていると、春がのぞき込んでくる。
「初めからそれをツ、カ、エーーーー」
勝義の絶叫が、炊飯場に響いた。
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●一行コンセプト
勝義が出来なかった火付けをあっさり成功させる春。そのコツを問いつめると着火剤を使ったことがわかり、勝義がキレた。
起 勝義と春が火をおこそうとしている。
承 中々火がおこせない勝義。ガイドブック片手に躍起になる。
転 あっさりと火を起こす春。どうやったのか問いただす勝義。
結 着火剤を見せる春。キレる勝義。
時間:一時間半
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