よみかく分室課題部屋

1185 「チョコサンドビスケット」　１０００字課題　Ｎｏ．８　１/１６　まこと

2005/1/16(日)11:32 - まこと - 3373 hit(s)

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「チョコサンドビスケット」　１０００字課題　Ｎｏ．８　１/１６　まこと

　翔子がガサガサという音を聞きつけた。クーラーの風にのって甘い匂いがしてくる。それは口の中にまで広がった。振り向いた翔子の目が弟のあきらをとらえた。ソファでチョコサンドビスケットを食べている。昼前でハラペコの翔子は引き寄せられていった。
「僕をいじめる人にはあげないよぅだ」
　あきらがビスケの袋をうしろに隠した。
「いついじめたのよぉ」
　翔子はあきらの前にペタッとすわった。
　気がつくと犬のラッキーもいた。横でおすわりをしている。長い舌で口をペロペロなめていた。体中でちょうだいとあらわしている。
　翔子も負けてはいられなかった。手をあきらのひざにのっける。クーラーの風で冷たくなっていた。
「ダーメ」
　あきらが頭を斜めに倒した。
　翔子はくちびるをとんがらせた。
「ほぅら、ラッキー」
　あきらがビスケットを高く放り上げた。ラッキーがジャンプする。ダイビングキャッチを決めた。ラッキーからシャクシャクという音がしてきた。
　猛烈に腹のたつ弟だった。
　だからおまえはいじめられる。そう言ってやりたかった。
　けれどがまんした。
「そぉだよねぇ。あきらの分減ちゃうもんねぇ」
　声の調子をやさしいお姉さんに切り替えた。
　翔子は立ち上がった。いそいそと台所へ向かう。
　あきらから見えないところへきたのを意識した。
　大急ぎで冷蔵庫に走り寄る。がばっと扉を開けた。足元に冷たい空気が落ちてくる。
　扉の裏にペットボトルがある。つかみとった。ずっしり重たかった。飲み頃に冷えている。
　コップ二個にジュースをそそぐ。もちろんひとつはあきらの分だ。
　リビングをのぞいた。
　あきらがラッキーにビスケットをあげていた。
「ばかばか。そんなことしたらなくなっちゃうじゃんか」
　翔子は両手にコップを持った。リビングへと入っていく。
　ひとつはテーブルに置いた。
　持っていたのはごくごくのどを鳴らして飲み始めた。すっぱいオレンジジュースだった。飲みにくい。けれども一気にからにした。コップはコツンとテーブルに置いた。
　あきらの視線を感じる。
　翔子はリモコンを手に取った。そしてテレビをつけた。
「お姉ちゃん。そのジュースさぁ」
「あぁ、それね。ついでだから持ってきたんだけど。飲む？」
　翔子はコップを持った。片手を床について体を伸ばす。
　あきらも手を伸ばして受けとった。けれどすぐには飲まずにいた。ビスケットを食べたのだからのどが渇いているはずだ。
　翔子はテレビに目を向けていた。
　あきらはしばらくしてからようやくジュースを口にした。
「お姉ちゃん、これ」
　翔子はテレビから目をそらした。
　あきらがビスケットの袋を放った。ビスケットが二つほど袋から飛び出す。
「あげるよ」
「わぁい！　ありが――」
　しかし袋の中のビスケはひとつだけだった。飛び出した分はラッキーが食べている。
　翔子はがっかりした。
　それでもビスケを口に放りむのは忘れなかった。ラッキーにおねだりされてはかなわない。
　ビスケはシャクシャクと音をたてて消えていった。甘くておいしいビスケだった。

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「一行コンセプト」
　弟の食べているお菓子を食べたい姉。なんとかゲットに成功するがたった一個でしたというお話。

「構成メモ」
　ひとりでお菓子を食べる弟。あんまりいじわるにしないように。
　そんな仕打ちをされつつ思いやりをしめすふりの姉。気持ちを動かされた弟からお菓子ゲットに成功。しかし、そううまくは運ばない。食べられたのは一個だけ。

　※姉の狡猾さで読み手が退かないように気をくばること。弟にかわいらしさがやどるようにすること。

「その他」
（人物設定など）
　主人公　翔子　　　ずるがしこい。どこか憎めない。
　弟　　　あきら　　姉にいじめられている。ひねている。

（補足事項など）トムとジェリーなきょうだい。

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