よみかく分室課題部屋

1287 「育んでいこう」１０００字課題　Ｎｏ.１７　喜怒哀楽の楽　６/２９　まこと

2005/6/29(水)21:50 - まこと - 3322 hit(s)

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「育んでいこう」１０００字課題　Ｎｏ.１７　喜怒哀楽の楽　６/２９　まこと

　芳樹の足が橋の下で止まった。
　ぐりっとうしろを向いた。うしろを歩いていた少女の足が止まる。
「つけてたろ、学校からずっと」
　少女の着ているブレザーには、芳樹と同じエンブレムがついていた。スカートのチェック柄も芳樹のズボンと同じだった。
「朝からだよな、用があるならさっさと言えよ」
　少女はにこりとした。なにも言わずに芳樹のほうへ歩み寄っていく。
　芳樹の背がそらされた。その横を少女が通り過ぎた。
　少女に合わせて芳樹の向きが変わった。
「なんなんだよ、おまえ」
「おまえじゃない、いつみ。深沢いつみってゆうの」
　すました感じの声だった。
「あたし、君の秘密、知ってる」
　いつみが肩越しに芳樹のほうを見た。芳樹は顔を斜めにしていた。
　いつみのカバンが地べたに置かれた。
　いつみは身をかがめ、ひらいた両手で口もとをかこった。みゅうみゅうみゅうとネコの鳴き声をまねした。
　芳樹の目が大きく開く。
　するとかぼそい鳴き声が聞こえてきた。草むらがガサガサゆれている。
　子ネコが草をかき分けて顔を出した。鳴くのをやめてあたりを見回していた。
　もう二匹草むらから顔を出した。
「ね、知ってたでしょ。君の秘密」
　いつみはしゃがんで芳樹を見上げた。芳樹のくちびるがぐぐっと曲げられていた。
「だから、なんなんだよ」
　低い声だった。
「……あたしが捨てたんだ。このコたち」
「なにっ」
　芳樹の顔が赤くなっていく。
「あのねっ、心配で毎日見にきてたんだけど、ほかにもお世話してくれる人がいるって、気がついて……それで、君だってわかって、だから、お礼を言ったほうがいいかなって」
「捨てたくせに！」
　芳樹が横を向いた。
　いつみは片腕に二匹を抱いていた。かわりばんこに頭をなでている。
「ノラネコのママがね、このコたちおいて消えちゃったの。そしたら、ちゃかちゃかって、大通りに出ようとするの。でね、ここなら安全かなーって」
　いつみはうつむいていた。
　かばんをそっと、下に置ろした。
　片手で子ネコを抱き上げた。もう片方の手にも子ネコを抱いた。
「で、こんなとこに置き去りにしたんだな」
「うちね、アパートなんだ」
　芳樹もしゃがんで、片手で子ネコを抱き上げた。
「うちもだ」
　ふたりは黙ってうつむいた。手は子ネコをなでていた。三匹の子ネコが代わる代わる鳴き声をあげていた。
　芳樹が立ち上がった。いつみを見下ろしている。
「こいつら、りっぱなノラにしなきゃな」
　いつみの視線が上げられた。
「手伝えよ」
　芳樹が押し付ける調子で言った。それは不機嫌な感じの、だけどあたたかみのある声だった。

　３時間
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「一行コンセプト」
　正体不明の女の子を不審に思っているのだが、事情を知って警戒心がとける少年の話

「構成メモ」
　はじめ主人公は正体不明の少女を不審に思っている。理由が分かり、態度が変化するという構成。
　※変化が唐突にならないよう注意。

「その他」
人物設定
　主人公　天宮　芳樹　　警戒心が強い、動物好き
　　少女　深沢　いつみ　快活だけど誤解を受けやすい、動物好き
　　　　　　　
（補足事項など）いつみはネコの世話をする芳樹に好意を抱いた。
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・時系列順にする。時間逆行禁止。
・重文、複文禁止。
・倒置法禁止。
・体言止め禁止。
・気弱語禁止。比喩禁止。
・読点禁止。

　ただしセリフと、必要だと思われる文でのみ使用可