よみかく分室課題部屋

1280 「笑顔の下で」　１０００字課題　Ｎｏ.１４　喜怒哀楽の哀編　　６/２４　まこと

2005/6/24(金)22:23 - まこと - 3856 hit(s)

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「笑顔の下で」　１０００字課題　Ｎｏ.１４　喜怒哀楽の哀編　　６/２４　まこと

「ほんとにひとりで大丈夫なのか？」
　康平は妹のアヤを見おろした。
「心配いらないってばぁ。お兄ちゃん、お母さんに似てきたね」
　アヤの笑い声が駅のホールに響いた。休日のせいか、ラッシュ時の混雑はみられない。
「早く帰るって、お母さん言ってた。だから大丈夫だよ」
　康平とアヤの両親は離婚している。それで兄妹は、離れ離れに暮らしている。
「アヤ、今日のこと、お母さんには内緒だからな」
「ぷふっ、わかってるって。なぁんか、わるいことしてるみたいだね」
　口もとに両手をあてて笑った。大げさな笑いかただった。こんなふうに笑うヤツだったかなと思う。
「やっぱりさ、お母さんが帰ってくるまで、一緒にいてやろうか」
「えー？　お兄ちゃん、今、お母さんに内緒って言わなかったー？」
　アヤは前かがみになって笑いころげた。笑いすぎだった。無理しているのではないかと気になってくる。
　アヤの住むアパートは駅のすぐ裏にある。距離は近い。近いのだが、とぼとぼ歩いて帰るのかと思うとかわいそうに思えた。
「やっぱ、次の電車にするよ」
　次の電車にすれば三十分以上時間があく。それだけ時間があれば、家まで送っていくこともできる。
　しかしアヤは、首を振ってほほ笑んだ。
「もぉ、お兄ちゃんたらぁ。お母さん帰ってくるよ。内緒なんでしょ。早く切符買いなさぁいっ」
　アヤがケタケタと笑いだした。さっきからずっと笑っている。その頭越しに駅の売店が見えた。
　棚にお菓子が並んでいた。色の良いパッケージが目を引いた。ポケットから財布を取り出す。
「お菓子買ってやるよ。あそこのベンチにすわって食べよ。アイスでもいいぞ、なっ」
　足を踏みだした康平は、アヤに目をやった。アヤの顔から笑みが消えていた。ドキッとする。足が止まった。
「もうこれ以上、笑えないよ」
　聞き取れないほどの小声だった。
　アヤは無表情だった。手を伸ばして、康平から財布を取った。そして歩きだした。切符の販売機へ向かっている。あわててあとを追いかけた。
「せっかく笑顔で見送ってあげようと思ったのにさ」
　やはり笑顔はなかった。財布から出した小銭を販売機に入れた。そうして、出てきた切符を康平に手渡した。
　康平はアヤを無言で見つめている。
　アヤがため息をついて財布をさしだした。
「変なこと言って、ごめんね」
　まっすぐ康平を見上げた。
「気をつけて帰るんだよ、お兄ちゃん」
　康平は財布を受け取った。財布に目を落としていた。
「生意気だな」
　康平は顔を上げた。むりやり、笑顔を作った。それから、ちいさいおでこを人さし指でこづいた。

　３時間
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「一行コンセプト」
　妹が心配で世話をやいているつもりだが、実はその逆だと気づく情けない兄の話

「構成メモ」
　はじめ妹は能天気に見える。兄は妹が気がかり。必要以上にかまう。
　兄が心配する場面をいくつか書いて印象付けたのち、妹のひと言でそれが覆る。という構成。
　※妹が年より幼くなりすぎないように注意。妹は演技をしている。その後がふけすぎないように。

「その他」
人物設定
　主人公　　大槻　康平（俺）お兄ちゃん
　妹　　　　桂木　綾（わたし）　アヤ

（補足事項など）妹はカンが鋭い。両親の不和もいち早く察知して兄に教えた。
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・時系列順にする。時間逆行禁止。
・重文、複文禁止。
・倒置法禁止。
・体言止め禁止。
・気弱語禁止。比喩禁止。
・読点禁止。

　ただしセリフと、必要な文にのみ使用可