よみかく分室課題部屋

1187 「色とりどりの花束」　１０００字課題　Ｎｏ．１０　１/３１　まこと

2005/1/31(月)22:32 - まこと - 4050 hit(s)

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「色とりどりの花束」　１０００字課題　Ｎｏ．１０　１/３１　まこと

　つとむがブランコを大きく揺らしていた。太陽を体いっぱいに感じる。まっすぐ先に白い花がたくさん咲いていた。そこに向けてえいっとブランコを飛び降りた。花のところまで突っ走ていく。茎の長い花だった。黄色のぷちぷちのまわりにふんわりした花びらが広がっている。札には”ひなぎく”と書いてあった。亜美ちゃんにあげたいなと思う。
　公園の外を見た。とんがり屋根の家がある。ベランダの手すりに鉢を下げていた。そこから葉っぱがたれている。ところどころに赤い花をつけていた。
　亜美ちゃんの家だ。
　花壇を見下ろした。
　札の下のほうに”おはなをとらないでね”という小さい文字があった。
　亜美ちゃんは花が大好きだ。
　つとむがあたりの様子をうかがう。女の子が銀色の棒をつかんで地面を蹴った。さかあがりをしている。鉄棒に夢中だ。つとむのことなんか気にしていない。
　――よぅし。
　花に手を伸ばす。心臓がばっくんばっくんしていた。
　チラッと鉄棒を気にした。大丈夫だと自分にいい聞かせた。
　女の子はまださかあがりをしている。
　つとむはぶちっぶちっとあわただしく花を摘んでいった。
　なんだか見られている気がしてしょうがない。
　ダンダンダンという音で飛び上がりそうになった。
　お兄さんたちはすべり台を逆からかけのぼっていた。その足音だった。
　――そろそろ、終わりにしよ。
　手には何本か花が握られている。
　せっかく摘んだ花だ。遊んでいる子どもたちに見られるわけにはいかない。取り上げられては大変だ。亜美ちゃんに渡せなくなってしまう。
　公園を一気に横切ることにした。
　全力で走りだす。そのとたん皆の注目を集めてしまった。鉄棒の前を斜めになって通りすぎた。すべり台は下をくぐった。
　公園を出るころには汗びっしょりになっていた。くるしくなって口と肩で息をする。
　なんとか無事に脱出できた。
　安心したところで亜美ちゃんを見つけた。
　頭のてっぺんには空色のリボンが結ばれいた。同じ色のワンピースを着ている。足元はレースの靴下に革靴だった。
　そばには亜美ちゃんのママがいた。ビデオを手にパパと話している。
　つとむが背をピンと伸ばした。お花を渡すチャンスだ。
「亜美ちゃ――」
　ハッとしてひなぎくを背に隠した。
　亜美ちゃんは両手で花束を抱えていたのだ。
「あー、つとむくんだ」
　亜美ちゃんが小道を渡ってくる。
「今日ねぇ、ピアノの発表会だったんだよ」
　亜美ちゃんは花束を見せてくれた。透明のセロファンがガサッといった。
　赤や黄色に混じって濃い青の花が目をひいた。
　花束からはいい匂いがした。
「パパがくれたお花なの。きれいでしょ？」
「き、きれいだけど」
　――ぼくだって、亜美ちゃんにお花、あげたかったんだよ。なのに……渡せなくなっちゃた。
　つとむは隠した花をぎゅっと握った。

「一行コンセプト」
　女の子にお花をあげようとしたら、すでに花束を持っていたというトホホな男の子の話。

「構成メモ」
　空き地に花が咲いたいた。きれいだなと思う男の子。女の子にプレゼントしようと思いつく。
　ピアノの発表会から帰ってきた女の子は、パパから大きな花束を贈られていた。お花は渡せず残念な結果に、という構成。

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いつ　春の日中
どこで　公園の花壇
だれが　主人公が
なにを　花を
どうした　亜美ちゃんにあげたいなと思った
理由　花がきれいだったから

起　きれいなお花を見つけ、女の子にあげようと思いつく主人公。
承　いけないと知りつつ、花壇の花を摘んでしまう。
転　そこまでしたのに、女の子は立派な花束を持っていた。
結　せっかくのお花だけど、渡せなくなってしまう。

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