〔前の画面〕
〔クリックポイント〕 〔最新の一覧〕
〔全て読んだことにする〕〔全て読んだことにして終了〕 〔終了〕
1219 「ひと足早い夏」 短編の承 4/27 まこと |
2005/4/28(木)22:45 - まこと - 2757 hit(s)
「ひと足早い夏」 短編の承 4/27 まこと
将矢は少女を目で追った。
――だれかに似てるんだけど、だれだろう。
少女の足が波の寄せるすれすれをたどっていく。
――あー、わかった。麻衣ちゃんに似てるんだ。たしか、ダンスユニット抜けて、ソロで活動してたよな。なんたって、笑顔がいいんだよ、笑顔が。
残念ながら、少女の笑顔を見ることはできなかった。けれど、鼻すじのとおった凛とした横顔を眺められた。
――島の子、だよな。友だちになれないかなぁ。
うしろ姿になった少女が、離れていく。
将矢はハッとした。少女が行ってしまう。
あとを追いかけて歩きだした。
話しかけるつもりだった。
――仲良くなって、付き合っちゃったりして。手をつないで浜辺を走ったりとか。親密になったり、とか、するかも。
つい顔がニヤけてきた。んふっと鼻で息をする。
すると少女が振り返った。
驚いた顔をしている。少女の手がふっくらした胸元に置かれた。
将矢はといえば固まっていた。
チャンスがやってきたというのに、話しかけるどころではない。動けなくなっていた。
少女もじっとしている。ほどよく焼けた顔に表情はない。けれど、警戒しているのは伝わってきた。
おだやかな波の音が、しつこいくらいくり返されている。
――な、なんか言わなきゃ。こんにちは、じゃ変か?
少女の長いまつげが何度もまばたいた。
――早くなんか言わないと。どうしよう。えーい、この際だ、こんにちはでいいや。
しかし将矢の口は、言葉を出せずにいた。
女の子と話したのなんて幼稚園以来になる。自分から話しかけたことになると皆無だ。そしてこのたびは、初めて会った子が相手である。
早く話しかけなきゃと気ばかり焦るが、なにも言えない。
少女の顔に、不審そうな表情が見てとれた。
なおさら焦った。
さっきまでとは違う、冷たい汗をかく。
勇ましく話しかけたかったのだが、情けない気分になっていた。
少女のまなざしまで冷たく感じられる。
――だめだ。
体中の力が抜けてしまった。気おくれしてうつむく。
少女がどんな顔をしているのか気になった。だが、いったん目をそらせてしまうと、なかなかもとには戻せない。
将矢は黙って、足元の縮こまった影に視線を落としていた。
承:話しかけたいと思うが、勇気が足りなくてできずにいる。
〔ツリー構成〕
-
-
┣【1219】 「ひと足早い夏」 短編の承 4/27 まこと 2005/4/28(木)22:45 まこと (1969) |
-
- ┣【1221】 削除
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
〔前の画面〕
〔クリックポイント〕 〔最新の一覧〕
〔全て読んだことにする〕〔全て読んだことにして終了〕 〔終了〕
※ 『クリックポイント』とは一覧上から読み始めた地点を指し、ツリー上の記事を巡回しても、その位置に戻ることができます.