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1240 「ひと足早い夏」 結のセルフリライト 5/15 |
2005/5/15(日)09:54 - まこと - 2529 hit(s)
「ひと足早い夏」 結のセルフリライト 5/15
将矢は軽くにらまれて、ビクッとした。背中に力が入る。身長が急に伸びた感じだ。
砂の上で、少女がくるっと向きなおった。
「みんな言うさ。ねぇねぇもにぃにぃも、おじぃもおばぁもよ」
上がったり下がったりする変なイントネーションだった。しゃべるのは速くないのに、なにを言っているのかわかりづらかった。
「この間はよ、知らない観光客がよ、あんなして言うさわけさ。失礼よ」
あいかわらず強烈なイントネーションだった。その語尾が強くなっていた。まだなにか言いそうな雰囲気だった。
「ごめんっ」
将矢は頭を深く下げた。青のハーフパンツからうっすら赤くなったひざがのぞいている。そのひざに手を置いた。日に当たって熱くなっていた。
足元に、細かな波がいくつも寄せている。波の音はするけれど、少女は黙ってなにも言わなかった。
――まいっちゃったなぁ。
アイドルに似てると言われるのだから、悪い気はしないだろうと思った。変なこと言う奴ぐらいだよなと考えていた。怒らせてしまうなんて思いもしなかった。やっとのことで声をかけたのに、せっかくの苦労をだいなしにしてしまった。
まだ怒っているのかどうか、気になった。頭をそっと上げてみる。
表情に変化はない。プクッとしたくちびるを引き結んでいた。
「ごめん」
さっきよりずっと低い声になった。許してもらえないかもしれないと、なかばヤケになっていた。
「麻衣ちゃんの、ファンなわけ?」
「え?」
特にファンというほどでもなかった。
「去年、写真の撮影に、二度も来ている」
声をはずませていた。なぜだか自慢そうにしている。
「へぇ」
少女のほうから話しかけてくれた。それは、麻衣ちゃんが島に来ていたことより驚きだった。似ていると言われて怒ったのは嫌いだからではないらしい。島にアイドルが来たことを、普通によろこんでいる。女の子って複雑なんだなと思う。
「星の砂の浜で、撮影していたさ」
起伏のとぼしい胸をそらせぎみにしてみせた。ワンピースのシワが、伸びる。
「見たいね? 撮影場所。星も砂もとれるんだよ」
少女の機嫌がなおっていることに、ホッとしていた。ご機嫌は、このまま良くなってくれそうだった。
「あー、うん。見たい」
「とってもきれいさ。驚くはずよ」
砂浜が茂みの陰になるあたりを指さしていた。カーブを描いた砂浜は茂みのとこで見えなくなっている。
少女が歩きだした。将矢を振り向きながら歩いている。ついてきてということだろう。小走りになって、はにかんだ笑顔に並んだ。
「島中の人が、麻衣ちゃんを見にきていたぁ。たいへんさ」
手振りをまじえて、うれしそうに話してくれる。声をかけてほんとうによかったなと思った。
結:少女と話しをする。好意を感じた少年は幸せになる。
3時間
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